光学ズームとデジタルズーム  
デジタルズームは使う価値なし!

光学ズームについて

「デジタルズームはズームではない」と言って終わりにしても良いような話なのだが、それでは身も蓋もないので、まずは光学ズームの話をする。

多くの人には今更ながらの話だが、ズームレンズというのは、レンズの配置を動かして焦点距離を可変にすることで倍率を変えられるようにしたレンズのことだ。 ズームレンズでないものは単焦点レンズと呼び、こちらは倍率固定、即ち画角が一定している。 ズームレンズは便利なものだが、一般に同じ値段のものなら単焦点レンズの方が明るく精度も高い。

焦点距離を短く取った場合、即ち画角を広く撮る場合をワイドと呼び、焦点距離を長く取った場合、即ち画角を狭く撮る場合をテレと呼ぶ。 テレはテレスコープ、即ち望遠の略である。 またそれぞれの限界での使用を、ワイド端、テレ端などとも呼ぶ。

ズームレンズは、遠くの物を大きく写すためのものというイメージが強いと思うが、もちろんそういう用途もある。 現在のところレンズ交換式の民生用デジカメは非常に高価で大型のモデルに限られるので、そういう機種を無視して考えると、光学ズームを備えたデジカメでしか得られない表現もあるのだ。

光学ズームで表現の幅が広がる

たとえば、3倍ズーム装備のデジカメを使用するとしよう。 被写体から1メートルまで寄ってワイド端で写すのと、被写体から3メートルまで離れてテレ端で写すのでは、どちらもほぼ同じ大きさで被写体が写る筈だ。 この2つの写真を較べると、被写体と背景の関係が異なるのがわかるだろう。

被写体のすぐ後ろに壁があるような場合にはたいした差はないかもしれないが、寄ってワイド端で撮った方は画像全体に切り取られて写る背景の範囲が広く、離れてテレ端で撮った方は写る背景の範囲が狭くなる筈である。

別の表現をすれば、ワイド側で撮ると背景にある物が小さく写り、テレ側では大きく写るわけである。 また、同じような表現上の差は前景に対しても働く。

また、詳しくは説明しないので、わからなければ読み流して貰いたいが、被写界深度という言葉がある。 絞りを絞って焦点距離を短く、即ちワイド側にすれば、ピントの合う距離の範囲が広くなり、その場合を被写界深度が深いと呼ぶ。 その逆に絞りを開いて焦点距離を長く、即ちテレ側にすれば、ピントの合う距離の範囲が狭くなる。この場合を被写界深度が浅いと呼ぶ。

たとえばアーティスティクな写真など、見せたい被写体だけにピントを合わせ、その前後はボケている写真を目にすることは誰でも頻繁にあると思うが、浅い被写界深度で撮ることによって、そういう効果を出すことが可能になる。

但し、デジカメは普通のカメラに較べて構造的に小さいため元々被写界深度がかなり深く、ボケを使った表現を用いることは比較的難しい。 しかし、ズームレンズ装備で絞り優先AEが使用できるデジカメなら、そういう表現も可能だ。 この時、CCDサイズの大きな機種の方が有利だろうし、フィルタも使用出来る機種ならばその手の表現が更に容易になる。

なお、倍率の高いズームレンズを使う場合の難しさもある。 高倍率で使用した場合、得られる光の量が減ることと、手元での僅かのブレが画像上では大きなブレに繋がることから、三脚を使用せざるを得ないこともあるのだ。

デジタルズームとは

では、デジタルズームとはなんだろうか。 デジタルズームは、ズームなどではない。 少し前の機種ならば、最大サイズの画像ではデジタルズームできないことが多かった。 それは、こういうことだ。

たとえば200万画素機で、1600×1200 ピクセルの画像が撮れる機種だったとしよう。 ところが、デジタルズームを使用した場合には、たとえば 1024×768 までの画像しか記録出来なかったのだ。 この場合、×1.5とか×1.6とかのデジタルズーム倍率の表示になる。

これは、受光素子の真ん中辺りだけを使用して画像を記録しているだけなのである。 ただ、そうすると、液晶ファインダには、その真ん中辺だけが全画面に表示されているため、液晶ファインダで見る限りには、光学ズームで被写体が大きく見えるのと同じように表示される。 ただそれだけのことだったのである。

言い方を変えれば、最大サイズで撮れる画像の中心部分だけを単純に切り取った小さな画像を保存するだけのことである。 大きく撮ってトリミングしても同じことで、最初から小さく切り取るためにファイルサイズも小さくて済むという以上の意味はなかったのである。

以前だって、たったそれだけだったわけではない機種もあったかもしれない。 また最近は、デジタルズームだからといって、画像サイズが制限されるということもなくなっている場合が多いだろう。 そういうものはどうしているかというと、やはり受光素子の真ん中辺りだけで撮影した画像を、パソコンで画像を拡大するのと同じようにデジカメが拡大しているだけなのである。

このことを知らないと「デジタルズームはなんか画質が良くないらしい」と言うだけで済ませてしまうかもしれないが、要はデジタルズームというのはズームでもなんでもない。 デジタルズームの画質が悪いのは単に結果に過ぎないのである。

だから、これを知っている人がデジタルズームを使うことは、まずないと言って良い。 まったくと言うか、非常に控え目に言って、ほとんどメリットがないからだ。

最近は、光学ズームで倍率が足りなくなると、その後デジタルズームをシームレスに併用するというような機種があるが、困ったものである。 そういう動作を禁じたり、デジタルズームを使わない設定が出来ればまだ救いがあるが、そうでないと使いたくもないデジタルズームに勝手に働かれてしまうことになりかねないのだ。

デジタルズームには使う価値がないのでどうでも良いのだが、一応書いておくと、デジタルズームでは光学ズームの浅い被写界深度を使ったボケのような効果は期待出来ない。 間違える人はいないかもしれないが、拡大処理のせいで画像全体がたしかにボケ気味になるだろう。 しかし、全体がボケるのでは、単なるピンボケに過ぎないわけだ。

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