露出補正のすすめ  
カメラはそんなに賢くない!

露出補正だけは覚えておいて損はない

デジカメにせよ普通のカメラにせよ、こんな暗い筈じゃなかった…とか、綺麗な花を見つけたので撮ってみたら、なんか色褪せた感じになってしまった…という写真が撮れてしまったことはないだろうか。

これは、カメラがあまり賢くないのが、ひとつの原因である。 そういう場合の対処法として、まず最初に考えるに越したことがないのが露出補正なのである。

露出補正とはそういう大切な機能なのだが、世間のこれに関する解説は、あまりにあっさりしたものか、あるいは露出の話全般が書かれた中での話か、どちらかに偏り過ぎである。 少なくとも私は、適度に丁寧に書かれたものを見たことがない。 そこで、そういう解説を試みようというわけである。

オート機能はどんなことを勝手に判断しているか?

露出補正のことを理解するには、まず、オートモードの時にカメラが勝手にどんな判断をしているのか、大凡のことを知るのが近道だろう。

カメラのオートには、通常、オートフォーカスと自動露出の機能がある。 オートフォーカスはピント合わせの話で、露出補正の話とほとんど関係ないので、ここではこれ以上触れない。

自動露出の方は、その写真をどういう明るさで撮影するか、カメラが瞬時に勝手に判断する機能のことである。 露出に関するすべてを自動で判断するモードは、通常はプログラムオートなどと呼ばれる。 プログラムオートモード、即ち自動露出の働いた状態で撮影すると、カメラは勝手に判断した結果に従い、撮影する明るさを調整する。

調整の方法は、主に、絞りの開け方(光を通す穴の大きさ)と、シャッタースピード(光を通す時間)だ。 普通のカメラの場合には、使用中のフィルムの感度がその計算の前提にあるが、デジカメの場合には機種によってCCD感度まで同時に調整することもある。

なお、絞り優先AE、シャッタースピード優先AEなどのモードが備わっている機種もあって、それをマニュアル系のモードと呼ぶことがある。 しかしAEというのは自動露出のことで、これらは、絞りの開け方かシャッタースピードの一方だけを人間が明示的に指定するものだ。 最終的に明るさを判断するのがカメラの自動露出機能であることに変わりない。

いずれにしても、これらはたいへんありがたい機能である。 写真撮影の対象になるシーンの明るさは、炎天下から夜景まで桁違いの幅があるので、見ただけでどういう露出で撮影しなければならないか判断できるのは、よほど年期の入ったカメラマンに限られるからだ。

明暗差の話

カメラに期待して良いのは、そこまでである。 というのは、なにを主要な被写体として写そうとしているのか、所詮カメラには理解できないからだ。 という話に入る前に、前提になる話をしておかなければならない。

人間の目は、たいへんに性能が良い。 CCDやフィルムの比ではないのである。 だから、桁違いという言葉では済まないくらいに激しい明暗差のあるシーンでも、それなりに見えてしまう。

ところがCCDやフィルムの場合、あまり強い明暗差には耐えられない。 というか、強すぎる明暗差は記録し切れないのである。 そしてデジカメのCCDの場合、普通のカメラのフィルムよりも相当に条件が厳しいのである。 ちなみに、許容できる明暗差のことを、ラティチュードあるいはダイナミックレンジという言葉で呼ぶことがある。

カメラに期待出来るのはそこまで

繰り返す。 自動露出の機能だが、これは激しい明暗差があるかもしれないシーンを、ある程度まで自動的に判断してくれる。 しかし、カメラには、カメラマンがなにをどう写したいのかまではわからないのである。

こう言うと、もっと良い測光方式を選択できるカメラもあるという反論もあるかもしれない。 しかし、それでカメラが賢くなるわけではない。 明るさの自動判定の方法が複数用意されていて、それを選択したり、せいぜい露出をここに合わせろ…という目安をカメラに指示することが出来るようになるだけである。

これらはかなり複雑な機能なので扱いも微妙だし、所詮どういう写真を撮ろうとしているかをカメラに伝えられるわけではない。 だから、そういう機能を使いこなせる人であっても、結局最後は露出補正に頼ることになるのだ。

カメラはそんなに賢くない!

話が一旦脇道に逸れたので再び繰り返す。 自動露出は、写すべき明るさをある程度まで自動的に判断してくれる。 しかしそこまでなのである。 これは、測光方式を選択できるカメラでも所詮は同じことである。

そこで露出補正機能の登場である。 露出補正というのは、カメラが適正と判断した明るさに修正を加えてやることである。 だから、完全なマニュアル露出モードを使用する場合には露出補正という考え方はない。 露出補正はカメラの自動露出機能の判断に対する訂正機能なのだ。 カメラの自動露出機能を、ユーザが添削してやることだと思えば良い。

普通、カメラの露出補正の単位は、±1段、2段あるいは±1EV、2EV といった単位で表現される。 多くの場合、1/2 か 1/3 単位で調整できるようになっている。 但し、安価な機種の場合に露出補正が出来ないものもあるだろうし、プラスマイナスだけで補正量を指定できないものもある。

ここで、プラス方向に調整を行えば、カメラの判断より明るく写すことを、マイナス方向では暗く写すことを指示することになるのだ。 ちなみに、1段分の補正はCCDへ通す光の量を倍にしたり半分にしたりすることである。

どういう風に露出補正するか

「明るいものはプラスに(より明るく)、暗いものはマイナスに(より暗く)補正せよ」という人もいるようだが、私に言わせれば露出補正の方針に明確なセオリーなどないのである。

たとえば、同じシーンでも露出補正の方針は撮影意図によって違って来る。 晴天の空を背景に満開の桜を写すとしよう。 こういう場合には何通りもの方針があり得る筈だ。 その場合にもセオリーが通じるという思想もあるかもしれないが、もっと極端な場合で夕日や朝日を写そうとする状況など想定すれば、そういうセオリーは破綻せざるを得ない。 例外を設けなければならないようなものはセオリーと言えないのである。

というのは、露出補正というのはあくまで、カメラの自動露出に対する修正・添削・調整に過ぎないからなのである。 もし破綻しないセオリーがあるとすれば、「カメラの気持ちになって考え、それを自分の意図通りになるように修正せよ」ということだけだろう。

そのようなわけで当然ながら、カメラやその測光方式の癖によっても、露出補正のやり方は変わらざるを得ないのである。

そのような理解のもとであれば、次のような言い方は出来るだろう。 自動露出はどんなシーンでも全体を無難な明るさに写そうとするから、実際に明るいシーンならより明るく、暗いシーンならより暗くなるように露出補正を行うと、雰囲気を表現できることが多い。

しかし、自動露出機能の判断する「無難な明るさ」が、どんな画像になるか予想できなければ露出補正の度合いを決めようがないし、極端なシーンでの自動露出はそれほど無難だとは言えない。 だからまず、カメラの気持ちになって考える必要があるのだ。

そうは言っても…

そうは言っても、慣れない人にカメラの気持ちになってみろというのは無理な注文である。

もっとも、デジカメの場合は撮った画像をその場で確認できる。 あるいは液晶画面をファインダとして使用すれば、その補正値で撮ったらどういう明るさで撮影されるか、かなりの程度確認できるわけだ。

但し、露出補正状態が液晶ファインダの明るさに反映しない機種もあるらしいので…私の感覚ではそういう機種はそれだけで失格だが…その手の機種ではこの手が使えない。 また、炎天下では液晶表示がほとんど見えない場合もあり、これも機種によって見えない度合いが違うけれども、時には液晶ファインダに頼れないこともあるだろう。

また、同じ構図を露出補正値を変えながら、複数撮影しておくというのも非常に有効な手段である。 まず、露出補正の効果を実感することが出来るし、露出補正の効果や方針を学習するためにもたいへん役に立つのだ。

その時に、というか、そういう風にして撮影した画像をパソコンで眺めるときに、Exif 情報を表示できるソフトを使用することを強くお勧めする。 というのは、たいていの場合、露出補正値は撮影した画像データの中に記録されているのである。 適切なソフトを使用すれば、実際に撮った画像を、設定した露出補正値を確認しながら眺めることが出来るのである。

露出補正方針の具体例

以下、典型的なケースでの大雑把な方針をいくつか書いておくことにしよう。 なお、いずれの場合もフラッシュを使うことは想定していない。 フラッシュを使う場合には、かなり事情が異なることだけは触れておく。

人物などのスナップを撮る場合には、被写体の顔と、周りの明るさを較べて考えよう。 顔が影になっていて周りより暗いなら、プラスに露出補正した方がいい結果が得られることが多いだろう。 逆に完全な順光で、顔が一番明るかったりすれば、マイナス補正しておかないと一番大事な顔の部分が白く飛んでしまいかねない。

花を撮る場合には、かなりマイナス補正した方が良いことが多い。 というのは、明るく写してしまうと花の色が薄い感じになってしまうのである。 また、日陰に咲いている花などの場合には、カメラは全体を一層明るく写そうとするので、その分も余計にマイナス方向へ露出補正してやる必要が生じる。

ところが、日陰に咲いている花なのだけれど、花だけには陽が当たっているというような場合には、露出補正がかなり難しくなるかもしれない。 全体が暗いのでカメラは画像を明るくしようとすると判断するならば、これは非常に思い切ってマイナス補正しなければならない。 逆にカメラが主に明るい花に露出を合わせようとする場合ならば、背景を潰しすぎないようにするためにプラス補正が必要な可能性もある。

緑深い自然風景は、マイナス補正した方が良いことが多いようだ。 逆光気味の場合にはなんとも言えないが、自然風景はあまり明るく写ってしまうと変な感じなのである。

但し、画角のうちに空がかなりの比率を占める場合には話が違ってくる。 たいていの場合、空は地上風景に較べてかなり明るい。 カメラは空を明るくし過ぎないように露出を決めようとすることが多く、そのままだと風景の方がシルエットになってしまいかねない。 そういう意図で撮るのでなければプラスの露出補正が必要になる。 同様に、自然風景とは言っても海面などが絡んでくると、露出補正の方針も異なって来るだろう。

都市風景も似たようなものだが、ビルなどの近代的構造物が非常に明るい場合がある。 ビルを白く飛ばしてしまいたくなければ、マイナス補正が必要だが、ビルだけがそれなりに写れば良いとは限らないので、この辺もケースバイケースである。

露出補正に絡む雑感

露出補正を覚えるとデジカメで写真を撮るのが一層楽しくなる筈である。 まず、露出補正せずに撮るのでは絶対ものにならないシーンが、かえって印象的な画像になったりするのである。 そういう経験も最初は数を撮ってこそだが、僅かな電池の消費だけでそれが出来るのである。

普通のカメラなら、露出補正の効果を学習するために、どういう補正値で撮ったのかいちいち記憶または記録しておかねばならなくなるが、デジカメでの試行錯誤はとてもイージーである。 撮るときから液晶ファインダの表示がたいへんに参考になるし、補正値をいちいち覚えておかなくても、いつでも Exif 情報を見れば良いのである。

だから気軽に試すうちに面白い写真も撮れるし、意図通りに撮るコツもたいした苦労なしに急速に覚えられる。 そしてますますデジカメにはまり出す…というのが、良く見られる構図なのである。

最近は、ちゃんとしたデジカメで露出補正できない機種は少ないと思うが、機能があればいいってもんじゃないのも事実だ。 機種によってはいまだに、メニューの奥深くに露出補正の設定があったりするらしい。 そんなカメラでは気軽に露出補正してみるわけにはいかないし、そもそも最も使用頻度が高くなる筈の機能のひとつなのである。

開発に携わっている人が、このカメラは「どんなシーンでもオートで完璧に撮れる」と考えているとは流石に思えないから、主な購買層はプログラムオートしか使わないと考えているにせよ、いやだからこそ、まともな写真を撮るには1枚1枚露出補正が必要になることを承知している筈なのだ。

それなのに露出補正をメニューの奥深くに持って行っているとすれば、実は自分が写真をろくに撮らないのでユーザの使い方がわからない人が設計しているか、ユーザを馬鹿にしているかのどちらかだろう。

そういう人達が開発や設計をした機種は、ユーザにとって不条理に不都合なところが他にもあるに違いない。 そういう機種を選ばないのが吉である。

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